概要
AWS は世界中にデータセンターを展開しており、その集合体を「グローバルインフラストラクチャ」と呼びます。
AWS のグローバルインフラストラクチャを理解することは、CLF の試験において重要なテーマです。アプリケーションをどのリージョンにデプロイするか、高可用性をどう実現するか、エンドユーザーへの配信を最適化する仕組みはどうなっているかと言った判断の土台となる知識です。
この記事では、グローバルインフラストラクチャを構成する主要コンポーネント(リージョン・アベイラビリティーゾーン)の役割と関係性を整理します。

この記事のメリット
- リージョン・アベイラビリティーゾーン(AZ)・エッジロケーションの違いと関係性を理解できる
- グローバルサービスとリージョンサービスの違いを説明できる
- 複数 AZ を使った高可用性の仕組みがわかる
- 障害スコープ(AZ 障害 / リージョン障害)に応じた適切な対策を選択できる
- 複数リージョンが必要になるユースケース(DR・低レイテンシーなど)を説明できる
- CloudFront や Global Accelerator がグローバルインフラをどう活用しているか理解できる
技術解説
グローバルインフラストラクチャの全体像
AWS のグローバルインフラストラクチャは、大きく3つの階層で構成されています。

- リージョン: 地理的に独立したエリア。日本なら「東京」「大阪」が該当します。
- アベイラビリティーゾーン(AZ): リージョン内に存在する、物理的に分離されたデータセンターのグループ。
- エッジロケーション: コンテンツをユーザーの近くで配信するための拠点。リージョンよりも多くの場所に存在します。
リージョン
リージョンは AWS のサービスが提供される地理的なエリアです。2025年時点で、世界34以上のリージョンが稼働しています(東京・大阪・シンガポール・バージニア北部など)。
リージョンはそれぞれ独立して動作します。あるリージョンで障害が発生しても、別のリージョンには影響しません。
リージョン選択の基準となる4つの観点
| 観点 | 説明 |
|---|---|
| コンプライアンス | データを特定の国・地域に保管する法的要件がある場合、その要件を満たすリージョンを選択します |
| レイテンシー | エンドユーザーに地理的に近いリージョンを選ぶことで、通信遅延を低減できます |
| サービスの可用性 | 一部のサービスや機能は、特定のリージョンでのみ利用可能です |
| コスト | リージョンによって料金が異なります。同じ EC2 インスタンスでも、リージョンによって単価が変わります |
グローバルサービスとリージョンサービス
AWS のサービスは、リージョンへの依存度によって2種類に分類できます。
| 種類 | 説明 | 代表的なサービス |
|---|---|---|
| グローバルサービス | 特定のリージョンに依存せず、世界共通で提供されるサービス | IAM、Route 53、CloudFront |
| リージョンサービス | 特定のリージョンにデプロイして利用するサービス | EC2、RDS、S3、Lambda、VPC |

グローバルサービスは AWS マネジメントコンソールでリージョンを切り替えても設定が共通で、すべてのリージョンから利用できます。一方、リージョンサービスはデプロイしたリージョン内でのみ動作し、別リージョンで利用するには改めてデプロイが必要です。
アベイラビリティーゾーン(AZ)
アベイラビリティーゾーン(AZ)は、リージョン内に存在する1つ以上のデータセンターの集合です。1つのリージョンには、通常3〜6つの AZ が含まれます。
AZ の特徴は以下のとおりです。
- 物理的に分離: AZ どうしは数十 km 以上離れており、洪水・地震などの自然災害が1つの AZ に影響しても、他の AZ は正常に稼働します。
- 高速ネットワークで接続: AZ 間は低レイテンシーのプライベートネットワークで接続されており、AZ をまたいだデータ連携も高速に行えます。
複数 AZ による高可用性
アプリケーションを複数の AZ に分散してデプロイすることで、1つの AZ で障害が発生しても、別の AZ でサービスを継続できます。これを「マルチ AZ 構成」と呼びます。

たとえば EC2 インスタンスを AZ-a と AZ-b の両方に配置し、Elastic Load Balancing でトラフィックを分散する構成が代表的です。Amazon RDS の「マルチ AZ 配置」オプションも同様の仕組みで、プライマリ DB と同期するスタンバイ DB を別の AZ に自動作成します。
エッジロケーション
エッジロケーションは、コンテンツやリクエストをエンドユーザーの近くで処理するための拠点です。リージョン・AZ とは別に、世界500か所以上に展開されています。
エッジロケーションを活用する代表的なサービスは以下のとおりです。
| サービス | 用途 |
|---|---|
| Amazon CloudFront | CDN(コンテンツ配信ネットワーク)。画像・動画・静的ファイルをエッジロケーションにキャッシュし、ユーザーへの配信を高速化します |
| Amazon Route 53 | グローバル DNS サービス。エッジロケーションで DNS クエリを処理します |
| AWS Global Accelerator | AWS のグローバルネットワーク経由でトラフィックをルーティングし、レイテンシーを改善します |
ローカルゾーン
ローカルゾーンは、特定の大都市圏にリージョンのサブセットとして AWS インフラを拡張したものです。リージョン本体と比べて1桁ミリ秒台の超低レイテンシーを実現したいユースケース(動画編集・ゲームなど)で活用されます。
AWS Outposts
AWS Outposts は、AWS が提供するハードウェアをオンプレミス(自社データセンターや拠点)に設置するサービスです。クラウドとオンプレミスで同じ AWS API・ツール・サービスを利用できます。データをオンプレミスに置く必要がある規制上の要件がある場合などに活用されます。
実践
コンポーネントの比較
| コンポーネント | 役割 | 数(目安) | 主な活用サービス |
|---|---|---|---|
| リージョン | 地理的に独立したサービス提供エリア | 34+ | EC2、RDS、S3 など大部分のサービス |
| アベイラビリティーゾーン | リージョン内の物理分離ゾーン | リージョンあたり3〜6 | EC2 マルチ AZ、RDS マルチ AZ |
| エッジロケーション | ユーザー近くでコンテンツ処理 | 500+ | CloudFront、Route 53 |
| ローカルゾーン | 大都市圏への超低レイテンシー拡張 | 数十 | EC2(特定ワークロード) |
| Outposts | オンプレミスへの AWS インフラ設置 | — | ハイブリッドクラウド |
障害スコープと対策の対応関係
障害がどのスコープ(範囲)で発生するかによって、取るべき対策が異なります。
| 障害スコープ | 影響範囲 | 対策 |
|---|---|---|
| AZ 障害 | リージョン内の一部 | マルチ AZ 構成(複数 AZ にリソースを分散) |
| リージョン障害 | そのリージョンのすべてのサービス | マルチリージョン構成(別リージョンにバックアップ環境を用意) |
マルチ AZ 構成はリージョン内の障害に対応できますが、リージョン全体で障害が発生した場合は対応できません。リージョン全体の障害に備えるには、別リージョンにシステムを用意しておく必要があります。
複数リージョンが必要になるユースケース
単一リージョンで運用するのが基本ですが、以下のケースでは複数リージョンの利用が検討されます。
| ユースケース | 説明 |
|---|---|
| ディザスタリカバリ(DR) | あるリージョンで大規模障害が発生した際に、別リージョンに切り替えて運用を継続します |
| 低レイテンシー | 世界中のユーザーに対して応答速度を最適化するため、各地域に近いリージョンにサービスをデプロイします |
| データレジデンシー | 規制や法律上の要件で、特定の国や地域にデータを保管しなければならない場合、対象地域のリージョンを使用します |
DR の具体例:東京 → 大阪へのフェイルオーバー
東京リージョン(ap-northeast-1)全体で大規模障害が発生した場合、大阪リージョン(ap-northeast-3)に用意したバックアップ環境に切り替えることでサービスを継続できます。

Route 53 のヘルスチェック機能と組み合わせると、東京リージョンへのアクセスが失敗した際に自動的に大阪リージョンへ切り替える「フェイルオーバールーティング」を実現できます。
マルチリージョン構成の主なメリットは以下のとおりです。
- リージョン障害への耐性: 自然災害や大規模障害でリージョン全体が停止しても、別リージョンでサービスを継続できます
- RTO(目標復旧時間)の短縮: スタンバイ環境を事前に用意しておくことで、障害発生から復旧までの時間を短縮できます
- コンプライアンス対応: DR サイトの地理的分散を要件とする規制への対応が可能になります
AWS グローバルインフラストラクチャのサービスへの適用例
例1: 静的ウェブサイトのグローバル配信
ユーザー → エッジロケーション(CloudFront) → S3(東京リージョン)
S3 に保存した静的コンテンツを CloudFront で配信することで、世界中のユーザーに対して高速な配信が可能になります。エッジロケーションにキャッシュされるため、オリジンサーバー(S3)へのアクセスを減らすことができます。
例2: 高可用性 Web アプリケーション
ユーザー → Elastic Load Balancing
├─ EC2(AZ-a)
└─ EC2(AZ-b)
↕
RDS マルチ AZ
├─ プライマリ DB(AZ-a)
└─ スタンバイ DB(AZ-b)
複数の AZ に EC2 と RDS を分散配置することで、AZ 障害に対する耐性を持たせます。
まとめ
AWS グローバルインフラストラクチャの要点を整理します。
- リージョン は地理的に独立したエリアで、コンプライアンス・レイテンシー・コスト・サービス可用性の4観点から選択します
- アベイラビリティーゾーン(AZ) はリージョン内の物理的に分離されたゾーンで、複数 AZ へ分散することで高可用性を実現します
- エッジロケーション はリージョンとは別に500か所以上に存在し、CloudFront や Route 53 がコンテンツをユーザー近くで処理するために使用します
- AWS のサービスは「グローバルサービス(IAM・Route 53・CloudFront など)」と「リージョンサービス(EC2・RDS・S3 など)」に分類されます
- 障害スコープが AZ 内であればマルチ AZ 構成、リージョン全体であればマルチリージョン構成(DR)で対応します
- 複数リージョンの利用が有効なケースは「DR」「低レイテンシー」「データレジデンシー」の3つです
- AWS Outposts を使うとオンプレミスでも AWS と同じ環境を利用でき、ハイブリッド構成を実現できます
