独学の先に、AWS の仕事がある ── ジュニアおさるのキャリア相談

執筆者とキャラクター紹介

執筆者:土肥(とひ)

株式会社ジェニュインの代表であり元エンジニア。これまでオンプレミスと AWS 環境のインフラ業務を担当。AWS 認定資格の学習で得た知識を、ハンズオンとともに解説するのが得意。直近では新人の教育も行っており、これから技術を学ぶ方が納得できる解説を心がけています。基礎編・Cloud Practitioner の記事では、解説役としても登場します。

土肥

クラウドおさる

クラウドおさる

はじめましてでござる。弊猿はクラウドおさる。IT インフラが異常に発達した猿山から、雲に乗って地上の AWS を学びに降りてきたのでござる。

クラウドおさる

基礎編や Cloud Practitioner の記事では、とひさんに素朴な疑問をぶつける役でござるな。Security - Specialty などの記事では、要所でワンポイントや注意点をひとこと添えるでござる。

クラウドおさる

猿山にもデータセンターや監視当番があって、地上で起きることはだいたい猿山にも同じ仕組みがあるのでござる。例え話がつい猿山に寄るのは、弊猿の癖でござる。

相談 1 ── 独学で CLF まで来た、その先が見えない

クラウドおさる

とひさん、今日は弊猿の知り合いの相談を持ってきたでござる。猿山のバナナ倉庫で在庫管理の当番をしている、ジュニアおさるという若い猿でござる。

土肥

ジュニアおさるさんですね。どんな相談ですか?

クラウドおさる

ジュニアは IT の仕事をしたことはないのでござるが、半年ほど前から、当番のあとに AWS を独学しているのでござる。CLF には合格して、今は SAA を勉強中。EC2 で Web サーバーを立てたこともあって、資格ラボのハンズオン記事で手も動かしているのでござる。

土肥

しっかり進めていますね。

クラウドおさる

ところが本人は、「資格の勉強は進むけれど、実務でどう使うのかが分からない」「このまま資格を積むだけでいいのか」と悩んでいるのでござる。次に何をすればよいか、聞いてきてほしいと頼まれたでござる。

相談 2 ── 何のために勉強しているのか

土肥

まずは、合格おめでとうございますと伝えてください。そのうえで、一度考えてみてほしいのが「何のために勉強しているのか」です。小さなゴールは資格ごとに置いていいんですが、その先に何があるのか。

クラウドおさる

何のために、でござるか……。

土肥

キャリアの相談をしてくれているということは、資格を持っていること自体がゴールではなくて、得た知識を使って仕事をすることが目的なんだと思います。そう考えると、優先すべきなのは、アウトプットを出すために手を動かせることと、それを論理立てて説明できることなんです。

クラウドおさる

資格は通行証で、仕事をするのはその先、ということでござるな。猿山でも、見張り当番の札をもらっただけでは、見張りはできぬでござる。

土肥

そうですね。ちなみに「何のために仕事をするのか」まで考え始めるとキリがないので、今日はそこは置いておきましょう(笑)。

相談 3 ── CLF の次に、何から手を付けるか

クラウドおさる

では、次は何から始めればよいのでござるか? SAA に進む前に、Linux やネットワークの基礎を固めた方がよいのでござる?

土肥

結論から言うと、全部やった方がいいです。SAA の勉強も始めつつ、Linux やネットワークの基礎も、できるに越したことはありません。「何から始めるのがいいんだろう」と悩む前に、次のことを始めましょう。最初のうちは覚えることが本当にたくさんあるので、インプットはとにかく貪欲にやってください。

クラウドおさる

全部でござるか……ジュニアが倒れぬか心配でござる。

土肥

モデルケースとしては、CLF に合格したなら、そのまま SAA に進むのがいいと思います。それと並行して、アウトプットは必ずやってほしいです。CLF を取ったということは、AWS の概念や考え方、メリットが知識として頭に入っているはずなので、それを実際に使ってみるんです。

クラウドおさる

使ってみる、とは具体的にどういうことでござるか?

土肥

たとえばコストのことを学んだなら、実際に Cost Explorer の画面を見てみる。グローバルインフラストラクチャの考え方を知ったなら、VPC を使ってマルチ AZ の環境を作ってみる。そうやって CLF で出てきたサービスを実際に触って、技術ブログなどに書いてみると、自分の理解の整理にもなりますし、人に説明できるレベルかどうかも確かめられます。人に説明できるところまで深掘りできれば、知識の定着としてはばっちりです。

クラウドおさる

覚えたことを、触って、書いて、説明する。猿山でも、バナナの目利きは、自分で選んで仲間に配ってみて初めて身につくでござる。ジュニアに伝えるでござる。

相談 4 ── 資格を積むだけで、大丈夫なのか

クラウドおさる

SAA の次は、何を目指せばよいのでござるか?

土肥

さっきお話ししたことが、ほぼ答えです。次は何をしようと迷うより、Professional レベルまでは AWS について広く学べるので、全部取るくらいの心持ちがいいと思います。もちろん、アウトプットも忘れずに。

クラウドおさる

全部でござるか。どのあたりで、仕事の方へ動き出せばよいのでござる?

土肥

資格も取って、アウトプットもできるようになると、ある程度自信もついてくると思います。転職を考えているなら、そのあたりで動いてみるといいんじゃないでしょうか。私が転職したときも、資格を 2 つ取って、3 つ目を勉強しているくらいでした。

クラウドおさる

ただ、ジュニアは「資格を積むだけで大丈夫なのか」と気にしているのでござる。地上では「資格は意味がない」という声もあると聞いたでござる……。

土肥

そういう論争もありますよね。でも、ここまでアウトプットをしてきているなら、ジュニアおさるさんは「資格を積んだだけの人」ではないと思います。資格の勉強でユースケースやベストプラクティスを学んで、問題に出てくるような構成を実際に手を動かして作って、それを人に説明する。この一連の流れは、与えられた要件から必要なアウトプットを出す現場の仕事と、やっていること自体に大きな差はないんです。

クラウドおさる

勉強のやり方そのものが、仕事の練習になっていたのでござるな!

土肥

そうなんです。だから、それをカジュアル面談や面接で存分にアピールしてみてください。きっと良い反応がもらえると思いますし、ここまで前向きにやってきた人なら、求めればプラスになるアドバイスももらえるはずです。

クラウドおさる

猿山の見張り当番の試験も、望遠鏡の名前を覚えるだけでなく、実際に見張って報告できるかを見るのでござる。ジュニアには、胸を張って話せと伝えるでござる。

新卒・未経験の方へ
クラウドおさる

AWS を仕事にしたい方へ ── 新卒・未経験から

この記事を書いているのは、AWS の設計・構築を仕事にしている現役エンジニアです。運営元の株式会社ジェニュインでは、新卒・未経験の方を募集しています。プログラミング未経験から入社して活躍しているメンバーもいます。

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相談 5 ── EC2 の次に、何を作ってみるか

クラウドおさる

ジュニアは EC2 で Web サーバーを 1 台立てたところでござる。その次は、何を作ってみればよいのでござるか?

土肥

EC2 を作ったあとも、やれることはたくさんあります。デフォルト VPC を使っていたなら、1 から自分で VPC を作ってみる。ALB の後ろに Web サーバーを複数台並べて負荷分散してみる。作った EC2 に CloudWatch で監視を入れて、それを SNS で通知してみる。

クラウドおさる

次々に出てくるでござるな……。ジュニアには、そこまで思いつけるか不安でござる。

土肥

こういうのは、ある程度経験を積むと自然に出てくるようになります。最初のうちは、公式のチュートリアルや、このサイトのハンズオン記事を参考にすれば、とりあえず試してみることはできますよ。

クラウドおさる

ジュニアがいつも使っている記事でござるな! 何か、お手本になる構成はあるのでござるか?

土肥

よくあるモデルケースとしては、VPC のマルチ AZ で、Web・AP・DB の構成を AWS のサービスを使って作ってみることですね。よく使うサービスをひととおりカバーできるのでおすすめです。あとは、S3、Lambda、Athena、RDS、CloudWatch あたりのよく使うサービスを触っておくといいと思います。

クラウドおさる

そこまで作れたら、その先もあるのでござるか?

土肥

もう一歩進むなら、IaC(インフラをコードで定義して作ること)ですね。CloudFormation や Terraform、Ansible を使ってみたり、CI/CD を組んでみたりするといいと思います。

クラウドおさる

手で作ったものを、コードでも作れるようにするのでござるな。

クラウドおさる

ただ、たくさん作ると、バナナが飛んでいきそうで心配でござる……。

土肥

コスト管理の観点では、AWS Budgets も設定しておきましょう。予算を超えそうなときに通知が来るので、使いすぎをある程度抑えられて安心です。

クラウドおさる

倉庫を建て増す前に、まず帳簿の見張り番を置くのでござるな。ジュニアに、最初に Budgets を設定するよう伝えるでござる。

相談 6 ── 独学で詰まったら、どうするか

クラウドおさる

ジュニアは周りに IT の仲間がいないのでござる。独学で詰まったとき、どうすればよいのでござるか?

土肥

独学で詰まりやすいのは、AWS の外、特にネットワーク関連ですかね。独学だとどうしても仮想環境を使うことになるので、ネットワークという概念的なものを理解するのに苦労すると思います。

クラウドおさる

目に見えぬものは、つかみにくいのでござるな。今は AI に聞けば、たいてい答えてくれると聞いたでござるが……。

土肥

今は AI がかなりカバーしてくれるので、わりと抜け出しやすいと思います。ただ、ここはぜひ書籍を読んでみてください。簡単なものでもいいです。何も知らない状態で AI を使うと、間違った答えに疑問を持てなくなってしまうんです。

クラウドおさる

地図を持たずに道を聞くと、間違った道を教えられても気づけぬ、ということでござるな。猿山でも、山の形を知っている猿ほど、迷子の知らせに早く気づくでござる。

相談 7 ── どこまでやれば、動き出していいのか

クラウドおさる

ジュニアは「あとどれくらい勉強すれば、仕事に応募できるのか」も気にしているのでござる。何か月、何時間、という目安はあるのでござるか?

土肥

私の感覚では、期間や時間より、自分がやってきた学習の中身や、まだできないことを、自信を持って論理立てて話せるかどうかだと思います。それができれば問題ないです。

クラウドおさる

できないことまで話してよいのでござるか?

土肥

はい。私自身、転職活動をしたときは AWS の実務経験はゼロでした。でも技術面の質疑では、ここまでは、どのように、何を想定して学習したかを話して、そんなに困ることはありませんでした。できないことは、できないですしね。

クラウドおさる

背伸びをせず、やってきたことを筋道立てて話せばよいのでござるな。

土肥

それと、インフラは作っている期間よりも、保守運用の期間の方が長いんです。なので、運用のしやすさや自動化まで考えられていると、「ただ作っただけじゃないな」というのが伝わると思います。

クラウドおさる

倉庫は建てる日より、守り続ける日の方がずっと長いのでござるな。

土肥

もちろん、これは技術面に限った話です。会社の文化や、ご自身の性格、ビジョンが合っているかどうかは、また別の話として考えてくださいね。

クラウドおさる

猿山の当番決めも、木登りの腕だけでなく、群れの気風に合うかを長老会が見るでござる。ジュニアには、何か月ではなく、話せるかどうかで決めよと伝えるでござる。

新卒・未経験の方へ
クラウドおさる

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相談 8 ── やってきたことを、どう残してどう話すか

クラウドおさる

面接で話せるように、学んだことはどう残しておけばよいのでござるか?

土肥

GitHub でも技術ブログでも、何でもいいと思います。大事なのは、必要なときにすぐ共有できる形にしておくことですね。

クラウドおさる

面接では、どんなところを見られるのでござるか?

土肥

面接では、「AWS ができるか」より「仕事ができるか」という観点で見られることの方が多いと思います。ここまで身につけたことをアピールしつつ、その知識を使って課題の解決にフォーカスできる方は、特に良い評価になるんじゃないでしょうか。技術力は、課題を解決したり仕事を進めたりするうえでの根拠になる部分なんです。

クラウドおさる

技術は目的ではなく、課題を解くための根拠でござるか。見張りの腕は、群れを守るためにあるのと同じでござるな。

相談 9 ── 遠回りしないために

クラウドおさる

逆に、ジュニアがやってしまいそうな遠回りはあるのでござるか?

土肥

完璧を求めたり、丸暗記したり、特定用途の高度な技術にこだわりすぎたりすると、最初のうちは遠回りになってしまう可能性が高いです。

クラウドおさる

最初から全部を完璧に、ではなく、広く触って、使って、説明できるようにする。ここまでの話とつながっているのでござるな。

締め ── ジュニアへの伝言

クラウドおさる

とひさん、今日の話をジュニアに伝えるために、まとめてみるでござる。資格はゴールではなく、仕事をするための通過点。CLF の次は SAA に進みながら、覚えたサービスを触って、書いて、説明する。EC2 の次は、マルチ AZ の Web・AP・DB 構成や IaC に挑戦して、Budgets で見張り番も置く。詰まったら、まず本を 1 冊。動き出す目安は、何か月ではなく、やってきたことを筋道立てて話せるかどうか、でござるな。

土肥

はい、そのとおりです。仕事についてからも、最初は振られたタスクを確実に、正確にこなすところから始まります。守破離でいう「守」ですね。今日話したような基礎を積んでおけば、その先でいろいろな場面に応用が利きますよ。

クラウドおさる

守るところから、でござるな。ジュニアもきっと喜ぶでござる。とひさん、かたじけないでござる!

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クラウドおさる

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